三角山の天狗
(鳥取県八頭郡用瀬町)
鳥取県八頭[やず]郡用瀬[もちがせ]町は、
昔、鳥取城から参勤交代で都に登る際、初めて休憩をとる所でした。
鳥取市内から乗用車で30分の所にあります。
用瀬の宿[しゅく]から仰ぎ見ると、三角山(トッキン山)がそびえています。
山頂には20-30人は、入れる祠があります。
昔、神主の田中某という人が祈願したことがありました。
7日間の難行苦行を行うつもりで、
4、5日経った申の刻(3時頃)のことでした。
谷底から夕立のような激しい雨足がします。
「空は雲一つ無いのに、おかしいな事じゃ」
と言いながら、
周りを見てもへんなことに、
風はあるのに木の葉は、そよとも動いていません。
突然、目の前5、6尺(2m弱)の所に、
すいっと怪しいモノが降りてきました。
長い鼻にドングリ目...
それは、瞬きもせずに神主を見つめます。
負けじとにらみ返す神主。
こひととき、二人はにらみ合いました。
と、そのものが、
まるであやつり人形が糸でつり上げられるように、
空中に飛び上がりました。
両脇には翼が生えていました。
前にうつむいたかと思うと、頭から谷底につっこんでゆきました。
雨も降っていないのに、
谷底から激しい雨足が響きました。
あれは天狗ではなかったか、
と、人々は言いました。
この山には、こんな言い伝えもあります。
無信仰な人がやってくると、
どこからともなく30cmもの黒い大きな蝶が現れて
顔を打って谷底に突き落とし、
信仰深い旅人が来ると、
黄色い蝶が姿を見せて山頂まで導いてくれるということです。
1. 三角山を望む 撮影:小松善則氏
2. 三角山神社
3. 流し雛風景
4. 享保時代の雛人形
写真提供(2.3.4):用瀬町役場
鳥取市の洒落た洋食レストランで
ランチを取っている時、
フト小松さんはこんな話をしてくれました。
...子どもの頃、もう一瞬で夕闇があたりを呑み込む寸前、
里の向こうの山裾に狐火がちらちらともります。
狐火はさあっとこちらに近づいて来ます。
縁側でそれを見ていると、
祖母が言ったモノです。
「それ、狐がお前の足下まで来とるぞ、
狐のことをほめろ、ほめろ」
お年寄りを入れた、家族そろって夕餉を囲む懐かしい、
家族のさざめきが都会から消えて
どの位になるでしょうか。
スーちゃんは、用瀬にはきっと行くからね、
と固く決心しました。