八人岩

(香川県小豆島)

小豆島の北東の海沿いに
「岩が谷[たに]という村があります。

江戸初期に大阪城の修築が行われたとき、
よい石の産地であるこの近辺からも数多く切り出されて、
大阪を目指して船で運ばれました。
そこには今も大きな石が転がっていて
大阪城の残石と言われています。
この大切な石の番人をした子孫は、
今も石床の姓を持つ人達だということです。

さて、岩が谷にひときわ大きな石がごろんと転がっていて
「八人岩」と呼ばれています。
言い伝えでは、その大岩の下には、
八人の人夫が下敷きになって、眠っているそうです。
その場に働いていたのは九人だったのに、
なぜか八人...

今回はその不思議な話を致しましょう。

人夫九人は、その日、
大岩を切り出すために岩を割ろうとしていました。
その内の一人は熱心に般若経を信じ、
暇があれば般若経を唱えるような人でした。
人夫達は一休みするために割りかけにしたまま、
大岩の下方で休んでいました。
そのとき、この人夫だけはまざまざと聞いたのです。

「ハンニャ、ハンニャ」

という声が誘うように岩の上から呼びかけるのを。

一体、誰だろう...

といぶかしく思って、我知らず、岩から這い出たとたん、
巨大な岩が男達の頭上を襲いました。

あわれ、
八人は生き埋めになってしまったのです。

それからこの大岩は八人岩と呼ばれて、
今も灯籠がまつられています。

八人岩 写真
八人岩は昔のまま 写真提供:内海町役場観光課
小豆島巡りの遍路達 写真
小豆島巡りの遍路達
(撮影:太田昭生)

スーちゃんのコメント

このお話は、田中田[みつる]さん
(内海町西村在住、70歳、(株)中国電力OB)
から伺いました。

田中田氏
田中田氏 撮影:藤井和子

田中さんは小学校2年の時に、受け持ちの男先生、
山本のビンちゃんから聞いたということです。
今でも法華経の262文字をちゃーんと覚えており、
出だしを朗々と唱えてみてくれました。
おしまいまで唱えると3分かかる、ということです。
ふーん、インスタントラーメンの煮える3分ね、
とスーちゃんはすぐ思いました。
時計がなくても法華経を唱え終われば、
ラーメンがちょうどでき上がるのです。

余談ですが、ホントはね、
この大岩の下をチェックしたくてむずむずしているのです。